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2009.4.14

〜感情と対話すること〜 

        さて、前回はケント・ハウスの断片的なエピソードから、 ぼんやりとした個人的な感想について触れてみました。     今回は、住宅産業のクレーム処理について語りたいと思います。               ここに1冊の製本があります。          102_20090414215444.jpg           別名『設計図書』というそうです。       契約後、その家の平面、立面、展開、基礎伏図、梁伏図、床伏図、小屋伏図、軸組、造作、 設備給排水などなど。。。       我が家をありとあらゆる角度から見た教科書のようなバイブルが施主の元に配られます。       ケント・ハウスでは、同じ製本を社長、設計、工事、デザインと数冊用意され、 各担当者がその家について様々な角度から把握するシステムになっています。       多くの人の目を通せば、それだけチェックの機会が増えるということになり、 施主にとっては、安心感や信頼感へとつながります。                      114.jpg      この製本は、我が家の工事を担ってくれた現場監督のものです。       家の点検に来てくれたときに、そのまま忘れて行ってしまい、なんの気無しに 開いたら、これでもか!というほどの書き込みがあったのです。       契約前、契約後と長い道のりで1つ1つ決定していった細かい部分の仕様の書き込みが 小さな赤い字で刻まれ、社内で我が家の様々な伝達が小まめに行われていたことが想像されます。       それだけではなく、現場ならではの、専門用語や、厚み、収まり部分の記載、   素人の私が軽く目を通すだけで終わってしまいがちな基礎付図や床、天井などのページにも   補強の書き込みがあるなど、打ち合わせをしながら書き込んでいった私のものとは視点が違い、   興味深く熟読することができます。                文字は、性格はもちろん、真剣さもリアルに伝えてくれます。         話は変わりますが、クレームは大きく分けると2つに分かれます。              一つは不具合や不良個所など、明らかに目に見える部分に対しての不満       これは、『問題があれば直す』 これに尽きるので比較的明瞭で、双方納得しやすいものですが、 問題なのはもう一つのクレームです。                  もう一つとは、目に見えない部分です。              。。。もしくは見えていても抽象的に近い部分の不満       それは信頼関係の部分やイメージの違いです。       私は我が家の計画中、家が建つ前は、プラン図や先ほどの製本図をひたすら3Dにして 想像を膨らませました。     しかし、実際に着工が始まって柱が入り、通路ができ、図面の空間が現実のものになると、 以前から何度も想像していたはずの頭の中の3Dと微妙な違いが生じてきたりすることも経験しました。       それは、もちろん設計図が勝手にサイズを塗り替えたわけではなくて、   素人である自分の頭の中の3D機能に限界があったからです。       なぜか、お客様の多くからは、「想像していたよりもっと素晴らしかった」という   嬉しいやら、悲しいやらの褒め言葉を頂きます。         それほど期待されていなかったのか、できた建物が想像を遥かに超えて完成度が高いのかは謎ですが(笑)         どちらにしろ、結果オーライと考えると、こうした製本の隅々に気を配っているところに、 お客様の率直な感想の理由が隠されているのかもしれません。         実際のクレームに関しては、問題の大きさに比例して、担当者レベルというより、 会社の考え方によるところが非常に大きいので、そこで対応に差が出てきます。         その考えや対応はアフターサービスへと引き継がれます。         しかし、アフターサービスは、「万全である」という表向きの言葉とは裏腹に、 実際には手薄である会社も少なくありません。       逆に、手厚いアフターサービスであっても、数年先のリフォームを見越した商売がらみだったりと   単純にはいかないので、実際に、自分がその会社で建ててみて、暮らしてみて、そのサービスを   受けてみなければ自分自身で判断することは非常に難しいところです。                         家づくりは多くの場合が、未知なる部分           そこを自分なりに咀嚼しながら、想像を膨らませていく作業に頼ることが多いので、 非常にエネルギーを要します。         昨今は、ネットなどの普及も伴って、欠陥住宅やクレームに対して、著しく不誠実な対応のメーカーなどが 名指しで世に出ている時代です。         これから家を建てる人々にとっては、そういう情報は、決して他人事ではないので、   この会社は大丈夫だろうか?というネガティブな疑いから入る事が多く、   かといって、その件に関して、ズバリ問い詰める事は、なかなか勇気のいる行為です。           だからこそ、お客様は出来上がりに敏感になるし、住み心地に厳しくなって当然なのです。     私が驚いたことは、ケント・ハウスはこうしたクレームに対しては、クレーム自身に向き合って   対話することのほかにお客様の感情との対話も欠かしていない事でした。                               クレームから逃げないというより、『お客様から絶対に逃げない』       その根底にあるのは、「会社側も、お客様を心底信頼している」という ちょっと不思議な構図です。     普通に考えると難しそうですが、それは、住宅という商品を提供する業界ならではの、   末長いお付き合いで構築される人間関係という特典があるからこそ成り立つ関係図なのです。         多くの住宅会社は、クレームという不都合な要素が絡んだ途端、一転して、クレームからいかに逃げるかに   重点を置いてしまうので、せっかく良い関係で築かれた人間関係を崩し、ますますお客様の不満が増長されて、   『住宅産業はクレーム産業』などというありがたくない汚名を着せられてしまうのです。         以前の記事と重なりますが、住宅も他のメーカー同様、大切なのは、相手の感情に最大限配慮し、 できる限り意向を尊重する事         ケント・ハウスにクレームが極端に少ない理由は、お客様にとって、この会社はいつでも聞き入れてくれる・・・ という安心感があるからに他ならないと、1年働いてハッキリとわかりました。       お客様一人一人と、建設中の確かなつながりがある会社は、信頼関係の貯金があるので、 万が一、問題が起きても感情の糸を解きやすいものだと思います。          “論より証拠”という考えに基づいた考え方の会社は、実証という大きな武器が味方になります。           アフターやクレームの対応も、検討中のお客様に、押し付けでアピールするより、結果的には遠回りでも、   積極的にオーナー様の話を聞いて頂いたり、注文住宅しか成しえない数多くのコミュニケーションの中で、   会社の姿勢を理解して判断してもらう方が説得力があり、納得していただけやすいからです。       それは、いわゆる営業部署を持たない独特の営業スタイルにも共通しています。                                              続きは今後の記事で・・・